海底地殻変動観測時ステムの開発と繰り返し観測

システムの概要・観測状況(3)

●音響測距原理

 GPSタイムサーバで同期して船上局から海底局に超音波測距信号を送信します.測距信号を認識(検出)した海底局は,あらかじめ設定した遅延時間(送信時の残響を消すために設けている)後に受信した信号をそのまま船上局へ返します(ミラー応答).船上局では,受け取った信号(波形)を収録します.後に相関処理等によって船上局への信号到達時刻を正確に割り出し,往復走時(測距信号が船上局ー海底局間を往復するのにかかった時間)を算出します.走時にCTDプロファイラで測定した音速(構造)を掛けることにより,船上局から海底局までの距離が算出できます.測距信号には他の信号を付属させて送信しますが,それらについては次節で説明します.

●音響測距信号と波形の収録
【船上局→海底局】
 下記の3つの信号を一連のものとして,船上局から送信します.
 ・呼出信号:正弦波,海底局毎にコードを割り当てて「呼び分け」に使う
 ・送波ヘッダ:12.987 kHzの正弦波で全海底局に共通
        海底局に測距信号を認知させ,誤応答を防ぐ
 ・測距信号:6波5次のM系列で,搬送波周波数12.987 kHz,信号長14.322 ms

【海底局→船上局】
 受信したM系列測距信号を遅延時間(1048.576 ms)後にミラー応答(そのまま返送)します.その際,応答ヘッダ(13.513 kHz)をM系列測距信号の前に付けます.省電力化のため,海底局は測距信号を返送したら直ちにスリープ状態に入り,次の呼び出し信号でウェイクアップ状態となります.

【船上局での波形の収録】
 16ビット,500 kHzでA/D変換し,測距信号の前後の波形約64 ms分をCFカードに収録します.その際,応答ヘッダの振幅で収録ゲインを自動調整します.
 

6波5次のM系列信号


船上局で受信した信号の例.下は最初の部分の拡大.

音響交信タイミング