第69回 名古屋大学防災アカデミー 2011年5月18日(水) 於:環境総合館レクチャーホール

 

地震リスクに知で備える

―防災科研における地震災害軽減に向けた取り組み―

藤 原 広 行

(独立行政法人 防災科学技術研究所 総括主任研究員)
 

講師紹介

5月18日の防災アカデミーは、独立行政法人防災科学技術研究所総括主任研究員の藤原広行氏をお招きして開催いたします。

藤原さんは、全国の地震動観測網として最も基盤的なシステムである「K-NET」の整備において中心的な役割を担われたほか、「全国地震動予測地図」の作成など、様々な防災研究プロジェクトの責任者として、リーダー役を担っておられます。

今回の防災アカデミーでは、地震災害の軽減に向けた取り組みについて、大変貴重なお話をいただけると思います。ぜひ、多くの方に聴講していただきたいと思います。

講演のようす

藤原氏による講演の様子 会場は満席となりました。
会場内の様子はロビーにも中継されました。 参加者は136名でした。

参加者の感想

防災科学技術研究所が、地域防災力向上のための様々な取り組みを行っている事は、これまでに各所の講演や展示会などで知っていたため、このたびの東日本大震災においてそれらがどのように役立ち今後どのように活用されていくのかという点に注目して、今回のアカデミーに参加した。

講演者の藤原氏は、長年のデータづくりやシステム基盤構築に関して、その取り組みの成果について紹介されつつも、「地震リスク評価にはまだまだ分からないことがたくさんある」と仰っていた。その上で、困難を承知で情報の公開と高度化を進めたいとされる姿勢には研究者として非常に真摯な方であるとの印象を受けた。

特に、ご自身の研究プロジェクトや国の研究機関の取り組みについても今回の震災で果たした役割を踏まえ、今後のあり方を考え直さないといけないなど、率直な意見を伺えたのは良かった。地震リスクの長期評価を出したことが、いつの間にか専門家の間にも「次に来るのは予測のうちどれか」という心理を生み出し、「全てのリスクを予想できるわけではない」という大原則を忘れてしまっていたのではないかというご指摘には、なるほどと感じた。

まとめとして、一部分だけ分かっているリスク情報に対し、今後我々は一体どう備えるかといった根本的な問題について、社会が曖昧な情報を正しく受け入れることと、専門家はそのために情報説明性の向上に取り組むことが必要、とされた。自分も防災に関心を持って関わる一員として、積極的な情報公開を支持し情報を使いこなすことで社会の備えに寄与していきたいと感じた。

 

株式会社ファルコン

倉田 和己