第67回 名古屋大学防災アカデミー 2011年2月10日(木) 於:環境総合館レクチャーホール

 

阪神・淡路大震災を語り継ぐ

~震災の直接体験を持たない学生たちのチャレンジ

舩 木 伸 江

(神戸学院大学 学際教育機構 防災・社会貢献ユニット 講師)
 

講演のようす

今回は実際に活動をしていらっしゃる
学生さん2名からも発表がありました
活動について発表する稲田靖子さん
活動について発表する大橋一徳さん 会場は88名の参加者で満席となりました

参加者の感想

舩木さんの話を聞いて、地震防災の活動が学問のみに留まらず、一般社会に向けた幅広いものであるべきだということを改めて再認識した。自分の所属する、福和、飛田、護研究室においても学問のみに留まらない、社会向けた活動を実践している。

神戸学院大学では、生徒が中心となって、市民へ向けた防災啓発を進んで実施しているそうである。自分たちも防災フェスタなどの防災啓発活動を通して、市民と交流することがある。

ここで大事なのは、啓発する側にとっても新たな発見があるということである。初め自分が参加したときは、自分たちに知識があり、相手に教授するという考えであった。しかし、例えば、年配の方に、地震時における地盤の影響を説明するために必要な、昔のことについて話すと、相手からも、過去の東南海地震、三河地震での経験や、戦争によって焼かれたための都市改変、過去と現在とを比較した土地利用の改変など、自分では知りえないことまで教えてもらえる。

この啓発する側と、啓発される側との相互作用が重要である。自分の保有できる知識には限界がある。それを他者と共有することによって、新たな発見もでき、それぞれが互いに知識を有することで、知識の量は莫大なものになる。

名古屋大学に減災連携研究センターが設立された。今後高確率で発生する、南海トラフの東海、東南海、南海地震に対して、大学での防災分野の研究のみで対処しようとするものではなく、環境学研究科、工学研究科、医学系研究科から、自然災害科学や防災工学、救命医学等の分野をも巻き込んでいる。幅広い知識を通して、巨大災害への減災を目的に設立されている。また、大学のみではなく、社会とも連携して対処するために、産学官民の連携により、手を取り合わなければ対処できないという考えに基づいている。巨大災害に対して、特定分野の視点だけでは物足りない。異なる分野の異なる視点から、減災を捉えることによって幅広い対策を練ることができる。社会全体で対応力を高めなければならないため、東海地方の中心大学である名古屋大学が連携を呼びかけることで、日本全体へ対策が進むことを強く望む。減災連携研究センターの意義は、他者との知識の共有という意味でも大きい。

また、神戸学院大学の生徒が主体となって活動するための積極性、責任の大きさを痛感した。防災啓発活動を実施する前に、準備に力を入れることで、知識の整理ができる。小さな子供にも災害の怖さを知ってもらうための工夫、人の防災意識を高めるための工夫など、苦労する姿がうかがえた。活動の一環として、過去の地震体験を聞きだすことによって、知識を共有し、防災啓発を進めようと考えているようである。過去の教訓を持ち出して、新しい啓発方法を推進する。つまり、これは、温故知新、古きを温めて新しきを知る、である。地震時の経験、教訓など、古いものの価値は大きい。その良さを理解しながらも、さらに改良し、新しいものを創造する。温故知新の姿勢が何事にも必要である。

名古屋大学も負けてはいられない。自分は何とか無事に卒業できそうなので、もう、名古屋大学の防災啓発には参加できなくなってしまう。残念である。

下級生の子たちには、神戸学院大学の生徒に負けないような積極性、責任感を身に着けてほしい。

防災啓発活動を通して、自分にも知り合いが増えた。学校でただ勉強しているだけでは、知りえない方ばかりである。老若男女、年齢も職業も異なる様々な人が集まる。この研究室で地震防災の勉強をするまでは経験することのできなかった、貴重な体験である。

この様々な人が集まる防災の分野で大事だと感じるのは、形式だけにとらわれない人と人との信頼関係である。防災啓発で人をまとめるのは、お金でも、権力でも何でもないと、自分が体験してわかった。

行政が、補助金をいくら出して、耐震化を進めようともなかなか難しいのが現状である。しかし、自分の信頼の置ける人に、耐震化を進めるように言われたら、人の心は揺れ動く。

そこが大事である。

名古屋大学の自分たちと神戸学院大学の舩木さんたちの防災啓発活動が、人と人との信頼関係の上に成り立っている点で、重なり合っていると感じた。

 

環境学研究科 都市環境学専攻 建築学系 環境・安全マネジメント講座

福和・飛田・護研究室 池田政人