第60回 名古屋大学防災アカデミー 2010年6月17日(木) 於:環境総合館レクチャーホール

未来を見据えて具体的な対策を

 

和 泉 正 哲

(東北大学 名誉教授)

講師紹介

今回は東北大学名誉教授、和泉正哲先生にお越しいただき、「未来を見据えて具体的な対策を」というお話を伺います。

和泉先生は建築構造がご専門で、東大を修了された後、建設省(当時)建築研究所、東北大学教授、東北芸術工科大学教授、清水建設常任顧問、また海外の多くの大学で客員教授などを歴任されています。

1960年代から日本の免震構造の草分けともいえる成果を残され、高度成長期から現在まで、超高層建物から社会システム、さらに電子計算機利用技術などに至るまで多くの業績をあげられています。

今回は、そのようなご経験をもとに、日本社会の安全・安心について、これまでを振り返り、またこれから私たちが何をすべきか、お話いただけるものと思います。

講演のようす

会場内の様子 講演される和泉先生
講演に聞き入る参加者 116名の参加者で会場は満員でした

参加者の感想

和泉先生は建築構造の分野の第一人者であり、その研究は20年先を行くといわれている。例えば免震構造は1960年代に和泉先生らが海外で発表した論文が始まりであり、日本には1980年代に欧米から逆輸入された技術である。他に長周期地震動の問題も同様に、先生の先見の明にはただ驚かされる思いがした。今回の講演ではそうした建築や防災の分野の話題ではなく、広く日本や世界を取り巻く環境、今後の展望や提言について講演して頂いた。

現状の日本は、エネルギー、食料自給率ともに低く、かつ政府には莫大な借金がある。今後の世界の動向における日本の現状について、先生は危機感を抱いているようだった。現在の日本の優れた点、劣る点を挙げた上で、日本の解決すべき問題を教育・エネルギー・福祉社会重視経済と3つ挙げている。批判のみに終始せずに問題の解決に向けた前向きな姿勢が印象的だった。

未来を見通すことは難しい。免震構造のアイデアを出した当初は社会に受け入れられなかったが、現在では建物形式の立派な選択肢となっている。今回の講演でなされた今後の動向や未来に向けての提言も、本当にそのようになるのか、そうなることが望ましいのか、現時点では個々人によって受け取る印象が異なるだろう。だが防災にしても、日本の今後にしても、先を見据えた行動が重要である。常にそう活動してこられた先生の講演を聴いて、改めて未来を見据えた対策の重要性を感じた。

環境学研究科 都市環境学専攻 鈴木承慈