第59回 防災アカデミー
「モシモの時、地震は?そのためにイツモ防災を!」
講演者
渥美公秀(大阪大学大学院人間科学研究科教授)
紹介

 今回の防災アカデミーは、大阪大学大学院人間科学研究科の渥美公秀教授による「モシモの時、地震は?そのためにイツモ防災を!」です。
 渥美先生は、言わずと知れた「災害ボランティアおよびボランティアネットワーク研究」のプロ中のプロ。
 台湾集集地震、中国の四川大地震でのご活躍があまりにも有名ですが、新潟県中越地震や能登半島地震、新潟県中越沖地震、など国内の被災地でも大活躍されております。今年で15年を迎える阪神・淡路大震災。当時先生は、兵庫県西宮市にお住まいで、被災の実態を目の当たりにされました。当時のご経験もひとつの糧とされた先生は、ボランティア元年から現在に至るまで、精力的に各地でご講演活動に邁進されております。
 渥美先生の名著のひとつでもある「地震イツモノート」。普段は難しい言葉で語られる地震災害、被害、備えまで、これほどまでに分かりやすくまとめられた本は他に例を見ません。大規模災害の問題とまっすぐに向き合われた渥美先生ならではの「防災」。ご講演では是非そのお考えを拝聴できればと思っております。

参加者の感想
 

 渥美先生とは今まで、2007年新潟県中越沖地震や2009年兵庫県佐用町水害等、数々の被災地で共に活動させて頂いた。また日常の防災活動においても、「イツモ防災」という考え方をご教授頂いたことにより、新しい分野の方々との繋がりを開拓することができ、何より15年間の活動の中で行き詰まりつつあった防災の捉え方に、新風を吹き込んで頂いた。
 先生のお話の随所には、とにかく「人を大切にする」という想いがちりばめられている。被災者支援や地域防災活動は、ともすると支援する側のペースに相手をはめ込んでしまうことがある。支援者というポジションが目の前のたった一人の「人」の存在をぼやかしてしまうのかもしれない。「被災者の○○さん」「支援が必要な○○さん」と、知らないうちに特別なレッテルを貼ってしまっているのかもしれない。

 

 しかし、子どもでもお年寄りでも、どんな立場の人であっても、人がキラキラ、生き生きと輝く瞬間は「自分が誰かの、何かの役に立っている」と思えた時にあるのではないかと思う。今まで守られるだけの存在としてしか見られなかった高齢者や障がい者、子どもたちが、防災訓練やマップ作りなどの取り組みを通じて、人から「ありがとう」と言われる瞬間に出会う。被災地であっても、避難所での掃除や炊き出し、お茶会などをボランティアと被災者が一緒に取り組むことによって、「あんたのお陰で助かったわ〜」と笑顔を向けられるようになる。また、たとえ何もできなかったとしても互いに「あなたがいてくれてよかった」と自然に言い合える関係によって、表情を和らげる方々もいらっしゃった。その一つひとつが原動力となり、その人の命や暮らしが輝き始める。私はそんな場面に、何度も立ち会ってきた。
 先生のお話は、そんな一人ひとりの「かけがえのない生」に改めて向かい合い、想いを馳せる機会を与えて下さった。そして今、私たちが取り組んでいる被災地支援や地域防災活動が、多くの人々の中からこの想いを見出し、共有し、一緒に育てていくための、きっかけ・場づくりとして、非常に有効な切り口であることを学ばせて頂いた。 

浦野 愛
(特定非営利活動法人レスキューストックヤード常務理事)

次回予告

 第60回防災アカデミー

 「未来を見据えて具体的な対策を」

 講演:和泉正哲(東北大学名誉教授)

 日時:2010年6月17日(木) 18:00-19:30

 場所:環境総合館1階レクチャーホール

写真撮影:稲吉直子