名古屋大学防災アカデミー

第48回 「大震災をメディアはどう伝えたか 〜阪神・淡路から14年・本当の教訓は〜」

講師: 隈本 邦彦(江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授)
場所: 環境総合館1階 レクチャーホール
日時: 2009年4月22日(水)18:00-19:30



兵庫県南部地震発生当時、マスメディアに在籍されていた隈本先生は、その烈震を出張先の神戸で経験され、神戸市民の被災や救出の状況をいち早く取材されました。
  大災害発生時にメディアが取り上げる映像は、かならずしも災害や救助の真の姿を正確に捉えているとは限らず、視聴者がもつ印象を誤った方向に決定づけてしまう危険性があることを、豊富な資料映像を用いて解説いただきました。

隈本邦彦先生。

今回の出席者は109名でした。
写真撮影:畠山和也

セミナーに参加しての感想

 本日の防災アカデミーの講師である隈本先生は、元NHKの放送記者であり、阪神大震災時の報道に見られたメディアの問題点を、現場経験を踏まえながら、わかりやすく伝えてくださりとても学ぶことが多かった。
 メディアは真実の一面しか伝えないことを私なりに意識してメディアからの情報を取り入れていたつもりだったが、阪神大震災について、事実とは違うことを信じていたことに気づかされた。
 「メディアは映像に写っていない真実を想像して丹念に伝えるべき」という指摘は震災を現場で直に経験し取材を行った隈本先生ならではの重要な提言であり、メディアに関わる方々に常に心がけていただきたいことである。一方で、情報の受け手である私たちも、情報を鵜呑みにせず、メディアが伝えない情報を想像するとともに、常にアンテナを張って、正しい最新情報に書き換えていく努力も必要であると感じた。
 本日の講演で特に忘れてはならいと感じたことは、「建物が倒れなければ人間は死なない」ということである。また、主に震災で倒れたのは古い耐震基準に基づく木造建築であり、新たな基準に基づいた昭和57年以降の建物は影響が少なかったという。しかしながら、未だに古い耐震基準の基づく木造家屋が残っており、そうした建物には高齢者や若者など経済的に弱い立場の人々が必然的に住んでいるという状況は変えていかなければならないと感じた。
 何事も無いとき、私たちはつい忘れがちであるが、「安全・安心」は快適に暮らすための最も基本となるものである。安全・安心に暮らすことの出来る社会の実現に向けて、今回学んだ知識を身近な家族や友人たちからでもまず伝えていき、この貴重な情報を少しでも広めていきたい。また、現在学んでいる、都市計画や街づくりに関する研究を進める際にも「倒れない建物」が都市や地域の安全・安心にとって欠かせない条件であることを十分に念頭において研究をすすめていきたい。
千葉 啓広 (環境学研究科・大学院生)



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