名古屋大学防災アカデミー

第46回 「観測データとコンピュータシミュレーションで見る地震の強い揺れ」

講師: 古村 孝志 (東京大学総合防災情報研究センター教授)
場所: 環境総合館1階 レクチャーホール
日時: 2009年1月20日(火)18:00-19:30



日本が誇る「地震観測網」やスーパーコンピュータによる高度なシミュレーションについて詳しくお話いただきました。

今回の出席者は99名でした。

古村孝志先生。
写真撮影:稲吉直子

セミナーに参加しての感想

 本講では、地震動・津波のシミュレーションから防災対策にいたるまで、多くの実例を挙げながら、基礎から丁寧にご説明をいただきました。およそ我が国に住む人々にとって地震災害は不可避のものであり、これをいかに軽減するかということは共通の関心事であります。一般の方が知りたいことは、災害がいつどこでどのように発生し、どうすれば生命と財産を守れるかということであって、シミュレーションの方法ではありません。しかしながら、そうした現実的な情報を提供するにはこうした基礎的な研究が不可欠であることを広報することは有益であると思います。先に、地震防災は共通の関心事と書きましたが、残念ながら関心は持ちつつも対策はしていないという人もいます。人はただ注意事項や支持を受けてもそれだけで承服して行動するわけではなく、同時に根拠を提示されてこそ真に得心して行動するのだと聞いたことがあります。地震防災も同じように、ただ振動台や再現映像で脅すだけではなく、基礎的な科学を説明することも防災意識の啓発に当たって重要であるということを、本講を拝聴して感じました。
平井 敬 (名古屋大学大学院 環境学研究科附属 地震火山・防災研究センター)

 日本の活断層研究,地震学研究は兵庫県南部地震以降急速に発展してきた。活断層研究では,大縮尺空中写真による詳細な変位地形の抽出が行なわれ,それらにもとづいてトレンチ調査も数多く実施されている。一方,地震学の分野でも高密度に地震観測点が設置されている。今回の講演では,これらの研究データや実際の観測データから地震動を予測し,それを可視化するという研究が紹介された。地震動を可視化することは,地震動の伝わり方や地質構造,表層の地盤特性といった様々なパラメータが存在し,一口に可視化といっても実際にはこの可視化が最も難しいとのことであった。このように可視化された地震動が伝播する様子はかなりリアルであり,イメージしやすいものであった。地球シミュレータの特徴は,地震動が伝播する様子の可視化だけではなく,地震を再現したり,さらには津波シミュレーションを膨大な量のパラメータを組み込んで再現できる点にある。なかでも今回印象的であったのは,南海トラフ巨大地震による津波であり,東南海地震と東海地震が同時に発生した場合と東南海地震10分後に東海地震が発生した場合とでは最大10m(2倍)も津波の高さが変化するという結果の紹介であった。このように,わすか数十分の差であっても現象によっては非常に大きな差が生まれ,被害想定にも影響を及ぼすということが明らかであった。今回の講演では最先端の研究を紹介して頂き,驚きの部分が大きかった。しかし,一方でコンピュータや地球シミュレータが日進月歩で高性能化していくなかで,その高性能さゆえ,シミュレーションを絶対視してはならないと感じた。膨大なパラメータを組み合わせることが可能になった分,様々な分野の研究者による多角的な検討が要求されてくるのだと思った。
中村 優太 (環境学研究科・大学院生)

 私自身は、現在下之割防災会の消火班長をしています(平成17年度発足で、会員は全体で59名)。各種防災関係の講演等に出かけています。昨年の12月20日に蟹江町産業文化会館でかにえ防災講演会があって、たくみ設計室の鈴木さん、、三重大学大学院川口惇さん、名古屋大学福和伸夫さん、三人の方の講演がありました。今回の講演があるのを、同年から聞きましたので、初めて参加しました。講演の内容はシミュレーションを加えて、話されましたので分かり易く、感銘を受けました。次回も参加したいと思っています。
服部 恒夫 (下之割防災会・消火班長) 

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