名古屋大学防災アカデミー

第32回 「地下水で東南海・南海地震を予測する」

講師: 小泉 尚嗣 (産業技術総合研究所地震地下水研究グループ長)
場所: 環境総合館1階 レクチャーホール
日時: 2007年9月12日(水)18:00-19:30



86名の聴衆が集まりました。

地震地下水研究の第一人者・小泉尚嗣博士。

小泉先生からの地震予知についての意識調査もありました。

セミナーに参加しての感想

 防災アカデミーには80%位出席させて頂いております。様々な防災知識や 最新の情報を教えていただき誠にありがとうございます。

1. 講師の小泉尚嗣氏は闊舌がよく、間・メリハリのとり方も工夫されて おり、大変聴きやすい講演であった。飽きることなく、興味を持って聴く ことが出来た。ただ、出席者の多くは防災関係に深く携わっている人なの で、前半の一般的な地震予知の部分は割愛して、主議題である地下水の話 題に講義時間を取ってもよかったと思う。後半部分が興味深い話だったの で、端折ることなく話を聞きたかった。
2 講義内容については、私だけかもしれませんがこれまでに聴いたことが ないものであった。今まで沢山の防災関係の講義を聴いたが、地下水の変 動に関する研究をされ、それが地震予知にも関与していることがわかり非 常に勉強になった。地味な研究を着実に進めていることに敬意を表すると ともに、こういった研究は予知の確実性を高める上で寄与が大きいと思う。 歪計による地殻変動観測と地下水の変動観測が地震予知観測の両輪となり、 予知の確実性を高める上で有意義であることをもっと公にアピールして、 堂々と研究を進めて欲しいと感じた。成果が出ることを期待しています。
3 どの講演会でも感じることだが、講義だけでは表面に出ていないことが 質疑応答の中で明らかになることがよくある。今日も同じように感じた。 しかし、時間の関係や他の質問希望者を無視するが如き状況に、講師・ 主催者共に困惑するような場面があった。そのことが少々残念であった。
濱島 港 (災害ボランティアコーディネーターなごや)

 地震観測網で使用される計測器といえば、地震計やら歪み計やらが思い 浮かぶが、水位計(帯水層の歪みによる地下水位の変化を捉える)という のは知らなかった。地震と地下水の関係ありそうな話といえば、中越地震 のとき、「山が動いために水脈が変わってしまい、湧き水が出なくなって しまった」という話を聞いたことがあるくらいだ。東海地震の予測のため の観測として、地下水位が長期にわたり観測されてきたことは初耳だった。
 講演では地下水位の事例で説明されていたが、いずれの観測項目にしろ、 大量の観測データと理論・シミュレーションの関係付け、さらに、外乱要 因の影響を排除し、通常変動との有意差有無を決める「しきい値」をいか に決定するか、これらの作業にはかなりのテマ・ヒマ・カネがかかるとい うことがよくわかった。卒倒しそうなほど地味で長期スパンの研究には頭 が下がる。「産・学・官」が一丸となって国を守ろうとしていることがひ しひしと伝わってくる。
 さて、「産・学・官」の、「地震予知の連鎖」とも言える観測−理論・ シミュレーション−予知。「民」の我々はどのようにつながるのか。減災 啓発や有効な対策の促進であることは言わずもがなであるが、今回の講演 テーマをいかに減災啓発に結びつけるか、悩ましい課題だ。水位変動を測 定する地下帯水層をぬれたスポンジにたとえて説明されたり、配布された A4用紙5ページに要点がわかりやすくまとめられてあったりで、素人にもよ くわかったし、地域に戻ってそのまま話をできそうなほどだ。だが、勉強 会−モチベーションアップ−対策実施へとつなげるためには、もう一節何 かをつなげる必要がありそうだ。腕のみせどころではある。
中根 輝彦 (西尾市下町自主防災会)

 本当に地震が予知できたら素晴らしいなとおもいつつ、今回の講演を聴 講させていただいきました。5月の『どこまでできる地震予知』では山岡 耕春先生が地震予知の現実を話され、その時の話では、東南海地震が予知 できないと愛知県は大変だなと言うのが率直な感想でした。
 今回の小泉先生の講演は、その曲者の東南海・南海地震を予知するとい うもので非常に興味と期待をもって参加しました。予知ではなく予測と言 う事で少しトーンダウンした表現をされていましたが、地下水位の変化で 地震以外の要素(気圧・雨・潮汐など)を排除して観測できるように、大 変細かい事まで考慮して取り組まれているのが良くわかりました。また今 後、新観測井を各地に整備し、すでに観測データーベースの情報発信をし ていると言う事で、更なる心配の種(モチベーション向上の元)ができま した。
 どちらにしても、ハイリスク・ハイリターンの地震予知ばかりを当てに せず、ローリスク・ローリターンの地震対策・備えをしておくのが肝心と 改めて痛感しました。
植村 良平 (バイクボランテイア・Bi-Vo)

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