名古屋大学防災アカデミー

第16回 「震災から11年、活断層問題を考える − NHKスペシャル「活断層列島」を読み解く−」

講師: 鈴木 康弘(名古屋大学教授・災害対策室長)
場所: 環境総合館1階 レクチャーホール
日時: 2006年1月20日(金)17:30-19:00




今回は東京大学の島崎先生の講演の予定でしたが、講師体調不良のため代替企画として災害対策室の鈴木が表題の講演を行いました。


予定外の講演にもかかわらず、55名の参加者がありました。鈴木室長が番組のポイントを解説したあとに実際の番組を全員で視聴し、最後にその内容について会場全員で議論を深めました。


議論の中では番組の制作を担当された方による解説や今後の展開の説明もあり、参加者一同が活断層問題についての理解を深めることができました。


セミナーに参加しての感想

 今回は、内陸活断層を取り上げたテレビ番組を全編見て議論を行う というスタイルであった。通常の「講演会」とは異なるスタイルで、 まさに「アカデミ ー」の名に相応しいものであった。
 東海地域で「地震」と言えば、東南海地震をはじめとする海溝型の 巨大地震 を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、東海地域(とり わけ岐阜県)は内陸活断層の密集地帯である。「遠く離れた海だけで はなく、自分の足元にも危険は存在する。いや、そっちの方がむしろ 恐ろしいかも知れない」そういうことを一般の方々に知って欲しいと 私は常々考えている。南海トラフでの海溝型地震の発生間隔が100年 〜150年であるのに対し、内陸活断層の地震の場合は千年以上と大変 長い。そのために、「いつかは起こるのだろうが、今日・明日では ないだろう」と考えがちである。しかし、内陸活断層の地震に対す る対策を立 てるときは、「今日・明日にも内陸活断層の地震が起 こる(かも知れない)」 と考えておく必要があろう。佐々淳行氏の 言葉によれば、「想定は悲観的に」 これが危機管理の原則である。 数千年に1回の現象が今日起こらないのは当たり前なのではなく、 むしろラッキーなのである。とは言え、朝起きて夜寝るまでの間、 「地震が起こるかも」と思いながら生きていく、そんな生活は窮 屈である。そうならないためには、やはり内陸活断層とは何者か を良く知る必要がある。そして、その知識に基づいて、自分たち の暮らしはその地震に耐えられるかを検討し、対策を立てれば良 いのではないか。「敵を知り己を知れば百戦危うからず」である。
 参加者の皆さんは、「活断層」というものを再認識して家路に つかれたので はないだろうか。もしそうであれば、今回のアカデ ミーは大成功であったと思う。ただ、(番組の範疇から逸脱しても 良いから)侃々諤々の議論が展開できる時間がもう少し長ければ最 高だったのだが.。
田所敬一(地震火山・防災研究センター,助手)



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