地震防災連続セミナー

第6回 「いのちを守る地震防災学〜大震災に立ち向かう知恵と方法〜」

講師: 林 春男(京都大学防災研究所教授)
場所:環境総合館1階 レクチャーホール
日時:2003年9月25日(木)17:00-18:30

環境総合館レクチャールームが新たに使用できるようになり、セミナー会場が広くなったので、学外の人にもセミナーに参加していただけるよう になりました。愛知県庁、名古屋地方気象台などからもお越しいただき、今回は学内外あわせて63名(過去最高)の参加者で会場が一杯になり ました。




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京都大学・林春男教授


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セミナーの内容は、社会調査から明らかになった阪神大震災の被災者の実態や、次の南海トラフの地震までに準備すべきこと など多岐にわたりました。


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広い環境総合館レクチャールームがほぼ満席になりました。





セミナーに参加しての感想

 名古屋市に居住するようになってからまだ半年立っていないが、日常生活におけ る地震・防災に関する情報量の多さと市民の関心の高さは前住地の京都市とは比較 にならないと感じている。自らも防災関係の情報に触れることが多くなったが、今 回の林教授の講演はその中でも最も印象に残るもののひとつであった。
 まず、災害においては脆弱性すなわち人間社会こそが素因であり、地震などの自 然現象そのものは誘因に過ぎないという考え方が提示された。これは通常は逆に言 われていることが多いように感じるが、防災を考える上で重要なスタートラインで あると思う。次に、災害の規模と取りうる対策の関係のモデルが示された。さらに、 地震の規模と発生間隔との関係が対数的であることと対応するかのように、人間の 時間感覚が対数的であり、災害発生からの時間経過と被災者の感覚が対数的関係に あることが説明された。これらは、これまでの経験から感覚的に漠然と捉えていた 事柄であるが、それらが明確にモデル化されて提示されたことは、説得力があり、 目から鱗であった。トリアージや災害ユートピアと公平不公平、ボランティア活動 のあり方など、実地調査から得られた貴重な情報と体験に基づく講演は非常に興味 深く、また、小手先の災害対策とは異なる防災の本質を問う講演には迫力を感じた。 時間の都合で割愛された災害対策の一元化の具体例と災害からの復興期の話を伺う ことができなかったのが残念であった。人間、命の次には「食う寝るところに住む ところ」が大事であることがよくわかった。
渡辺俊樹(地震火山・防災研究センター助教授)


 この地震防災セミナーに参加するまで、自分は地震と防災を甘く見ていたような気が する。もし自分が東海・東南海地震に見舞われても、建物につぶされず、最初の数日間 を準備しておいた食料で乗り切れば、後は行政が何とかしてくれるだろうと楽観的に考 えていた。しかしセミナーで、「国の役割は限りある資源を調節・分配するだけ。つま りどこを切り捨てるか決めるだけで、個人の役には立たない!」といわれ、恐ろしくなっ た。東海・東南海地震は類希なる広域災害であり、どこもかしこも被災地になってしま う。自分の身を自分で守るのは当然として、万一の時に自分の財産、自分の暮らしを自 分で守れるよう、自分の周りの防災力を見詰め直そうと思った。
 また、これまであまり学ぶことのなかった被災地における心理、考え方に触れること ができたのは大変興味深かった。Triageを知らなかった消防士の苦悩や、災害ユートピ アを懐かしむ被災者の気持ちなどは、実際に被災してみなければきっと考えることもで きなかっただろう。東海・東南海地震の災害は恐ろしいけれど、それに立ち向かうため には気持ちをしっかりと持ち、災害から立ち直れるように「心の準備」もしておこう、 と感じた。
倉田和己(工学部社会環境工学科4年)



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